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1 コース紹介

箱根駅伝10区間について説明します。

2区、3区、4区、7区、8区、9区、10区を通常区間、1区、5区、6区を特殊区間として説明します。

まずは通常区間です。

 

2区

横浜市鶴見区から戸塚区までを走る2区は、5区に次ぐ距離を誇る23.1kmの長丁場です。

10kmを過ぎてからしばらくすると、ダラダラと長く上り続ける坂があり、20kmを過ぎてからのラスト3kmでは、上って下ってまた上る、という非常にコース難度の高い区間です。

コースが難しい事に加えて、駅伝は先行逃げ切りが理想という事もあり、この2区には各チームのエース選手が登場します。

 

3区

横浜市戸塚区から平塚市へ。距離は21.4kmと、特に長い訳ではなく、コースも下りと平地がほとんどの走りやすいコースです。

2区で良い走りをしたチームは3区でその流れを確実な物にしようとし、2区で失敗したチームは3区で流れを取り戻す必要があります。

結果的に、この3区は、時には2区に次ぐ激戦区間となります。

 

4区

平塚市から小田原市へ。距離は18.5kmと、箱根駅伝の最短区間です。

細かいアップダウンがある区間ですが、やはり最短区間なので、基本的には中位以下の選手が走るつなぎの区間です。

ライバルチームの戦力が落ちる事を見越して、あえてこの4区に強い選手を配置し、勝負をかけるチームもあります。

 

7区

復路7区は4区の裏返しの区間です。

4区よりも長く、21.3kmの距離があり、4区同様に細かいアップダウンがありますが、基本的にはつなぎの区間です。

しかし、復路に強い選手を残した場合、早い段階で仕掛けるために、この7区に投入する事もあり、場合によっては復路で1番のハイレベルな区間に変わる可能性もあります。

 

8区

21.4kmの8区は、3区の裏返し区間に当たり、3区の長い下り坂が上り坂になるため、3区よりもずっときつい区間です。

それに加えて気温の上昇もあります。

選手達が走る時間帯は10時〜11時頃になるため、日差しが強くなり、暑さが選手達を苦しめます。

こんなにきつい8区は、全区間で最も弱い選手が走る、最大のつなぎ区間とされています。

明確な理由はわかりませんが、きついからこそ無理はせず、リスクを少なくしてクリアしたいという意味かと思われます。

他のつなぎ区間と同様に、やはり8区でも、ライバルチームの戦力が落ちる事を見越して、あえて強力な選手をぶつける作戦を取るチームもあります。

 

9区

9区は2区の裏返し区間です。

2区のきつい上りが下りになるため、そこまできつい区間ではありませんが、復路最長の23.1kmの距離があり、後半の要となる区間です。

この区間に強い選手を配置する事で、8区の選手に安心感を与え、10区の選手に勢いをつける事が出来ます。

しかし、9区の選手が走り出す頃にはある程度勝負がついてしまっているケースも多い為、有力選手は早い段階で使い、9区は無難にこなす作戦を取るチームも多いです。

 

10区

アンカーの10区は、後述する1区の裏返し区間にあたり、ほぼフラットで走りやすいコースですが、距離は23.0kmの長距離区間で、昼過ぎに東京の都市部を走り抜けるため、全区間で最も暑い区間でもあります。

日本橋を通る関係で、1区よりも1.7km距離が長くなっています。

ゴールテープを切るという華やかな役割があるので、超重要区間と思われがちですが、基本的には無難に確実にゴールまで襷を運ぶのが10区の選手の役割です。

勝負がもつれる事も想定して、最終決戦にそなえてラストスパートの効く選手を配置する事もあります。

しかし、ラストスパートが効く選手は瞬発力に優れている物の、暑くて距離の長い10区は持久力も相当に求められるため、瞬発力タイプの選手には厳しい部分もあり、選手起用の難しい区間でもあります。

 

次に特殊区間の1区、5区、6区を紹介します。

特殊区間は複雑なので長文です。

特に1区は最も複雑なので、最後に超長文で説明します。

 

5区

小田原から往路のゴールのある箱根芦ノ湖へと走る5区は、最長の23.2kmの距離と、800m以上の山を上る、通称「山上り」と呼ばれる過酷な区間です。

上りきった後は、一気に100m以上も下るため、余力がないとこの下りの部分が上手く走れないと言います。

5区は最も差がつきやすい区間です。

しかし、単純にエースが走る事がベストとは限りません。

5区で好走する選手には、「走力タイプ」と、「適性タイプ」が存在します。

「走力タイプ」の選手は5区以外の区間でも活躍出来るのに対して、「適性タイプ」の選手は5区でしか真価を発揮できません。

5区は適性のある上り坂のスペシャリストに走ってもらい、走力の高いエース選手には平地の区間を走ってもらうのがセオリーです。

 

 しかし、そういった常識が通用しない選手もいます。

2009年〜2012年まで4年連続で区間1位を記録した、東洋大の柏原選手は、平地での超一流の走力と、高い山の適性を兼ね揃えていた天才選手でした。

平地でチームのエースとなれる走力を持ち、上り坂の適性を同時に持っているなら、そのエースは大差のつきやすい5区を走るのがベストです。

 

6区

5区の裏返しに当たり、下り坂が主体の20.8kmの区間で、5区以上に専門性の高い区間です。

800メートル以上も高低差のある山をかけ下り、「山下り」の異名を持つ区間ですが、スタートから4km程は上り坂が続き、意外にも全区間中2番目に上り坂がきつい区間でもあります。

ラスト3kmの部分は平地になるので、下り切ってからのこの部分の踏ん張りがタイムに響いてきます。

区間上位〜中位が、59分〜1時間01分の間に集中する事が多く、それほど差はつかない区間です。

 

6区の特徴は、好記録の目安がとてもわかりやすい事で、1時間を切れるかどうかで判断出来ます。

とにかく専門性の高い区間なので、同じ選手が4年連続で走る事もあり、4年連続の1時間切りを達成した選手こそ、真の下りのスペシャリストと言えます。

下り坂の専門家達の競演となる6区山下りは、他の区間と比べても異彩を放つ区間と言えます。

 

1区

東京都千代田区から、横浜市鶴見区へと続く1区のコースは、距離は21.3kmと特に長いわけではなく、コースはフラットで気温も低いので、ある意味一番走りやすい区間です。

しかしこの何の変哲もなさそうな1区が、1番特殊な区間と言えます。

全員が同時にスタートする1区は、まずは集団を形成するパターンが多いです。

そして1区のコースは走りやすく、それは言い換えれば仕掛け所が少ない事も意味しています。

走りやすいコースで集団が形成されれば、当然その集団は崩れにくくなります。

残り3km程の地点にある、多摩川を渡る橋のアップダウンが数少ない仕掛け所ですが、残りの距離が短いので、ここで集団が崩れても大差はつきません。

駅伝は前半の流れが大事なので、1区は重要区間と考えるか、差がつきにくいので無難に走る区間と考えるか、判断の難しい所です。

 

1区が差がつきにくい理由には、選手の心理も影響しています。

集団内では、先頭を引くよりも他の選手の後ろについた方が楽なので、前に出たがる選手は少ないのです。

走りやすい1区は、少し実力が上の選手のペースにも何とかついて行けてしまう事もあり、 中途半端な実力差では、前に出ても集団から抜け出し切れず、良いペースメーカー扱いされるだけになってしまいます。

 

誰も前に出たがらないと、集団は超スローペースになってしまう事もあり、その時は有力選手を起用しても無駄使いになってしまいます。こういう展開では、1区に力の劣る選手を使ったチームが得をする事になります。

しかし、ペースメーカー扱いされる事を覚悟で、先頭を引き続けるアグレッシブな選手が1区に出てくる事もあり、こういう時はハイペースの勝負になります。

力の劣る選手を起用した時にハイペースのレースになれば、いくら走りやすい1区とは言え、取り残されてしまいます。

1区で大きく遅れれば、2区以降に焦りの連鎖反応を引き起こす事もあり、致命傷になりかねません。

1区の難しさをわかりやすくまとめると以下のようになります

 

スローペースだと差がつきにくいからまあまあの選手で無難にこなしたい

でもハイペースになるとまあまあの選手じゃついていけないから怖い

でも強い選手を使ってスローペースになっちゃうともったいない

 

1区で損をしないようにしようとすると堂々巡りになってしまいます。

それでもその中で、できる限りベストな結果に近づけるように、各チームはライバルチームの作戦を読みながら選手を投入するのです。

 

1区でエース級選手を最大限に活かした例もあります。

2007年大会の1区には、東海大のスーパーエースである佐藤選手が出場し、前半から超ハイペースで飛ばしました。

ついて行ったのは東洋大の大西選手のみで、他は「佐藤のペースについたら潰される」とばかりに、佐藤選手を無視し、3位集団を形成してレースを進めました。

結局、区間新記録で駆け抜けた佐藤選手は、後半一気にペースダウンした大西選手と、スローペースの3位集団に4分以上の差をつけるという前代未聞の展開になりました。

 

似たような事は2011年大会でもあり、この時は早大の大迫選手が、スローペースの集団にハマってしまった東洋大に2分以上の差をつけました。

この年の早大は、1区で稼いだリードを活かして東洋大を抑え、総合優勝をしています。

 

1区にエース級を使うのは、うまく行けばハイリターンを得られる事もありますが、大当たりか無駄使いのどちらかになりやすいです。

 

スローペースとハイペースのどちらになりやすいかは、区間1位のタイムが1時間03分を切っているかどうかで判断すれば、90年代以降のレースを見るとほぼ半々です。(2014年現在)

仕掛けどころの少ない1区で勝負をかけるのは、2区で勝負をかけるより難しいので、どちらかと言えばスローペースになるのが自然な姿と言えます。

しかし、その自然な流れに逆行するように先頭を引き続けたり、一気に飛び出したりする強靭なメンタルを持つ選手が1区に出てくる事でハイペースになります。

1区のレース展開には流行のような物があり、1度ハイペースのレースになると、翌年以降もハイペースを警戒して強力な選手が集まり、結果的にハイペースの展開が続いたりもします。

どこのチームも出遅れは避けたいので、基本的にはそこそこの有力選手を1区に持ってきますが、更なる有力選手=スーパーエース級を使った方が得をする事もあれば、走力の低い選手で無難にこなした方が得をする事もある1区は、最も特殊で、最も複雑で、最も予想するのが難しい区間と言えます。

 

 

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