2011年大会の感想など

凄いとしか言いようのない大会でした。優勝争いが史上最速のタイムならば、10位シード権をめぐる争いもまた史上最速のタイムでした。明暗を分けたタイム差も史上最大の大接戦。今年の大会は伝説として語り継がれるでしょうね。間違いなく史上最高の大会でした。

往路はテレビ画面では追い風気味のようにも見えましたが、私は朝8時〜10時くらいにかけて2区、3区、4区のコース付近にいたのですが(バイクで小田原に向かってました)、タイムに影響を与えるほどの追い風には感じませんでした。

私なんかが普通の感想を載っけてもしょうがないので、大会前にしたシミュレーションと照らし合わせた感想です。

 

1位 早稲田大学  10時間59分51秒  シミュレーション11時間03分18秒

2位 東洋大学  11時間00分12秒  シミュレーション10時間58分25秒

3位 駒澤大学  11時間03分53秒   シミュレーション11時間06分44秒

4位 東海大学  11時間08分12秒   シミュレーション11時間14分32秒

5位 明治大学  11時間08分24秒   シミュレーション11時間12分14秒

6位 中央大学  11時間11分24秒  シミュレーション11時間15分09秒

7位 拓殖大学  11時間11分28秒  シミュレーション11時間20分07秒

8位 日本体育大学  11時間13分19秒  シミュレーション11時間12分24秒

9位 青山学院大学  11時間13分20秒  シミュレーション11時間20分35秒

10位 國學院大學  11時間13分23秒  シミュレーション11時間26分02秒

11位 城西大学  11時間13分26秒  シミュレーション11時間12分22秒

12位 山梨学院大学  11時間13分50秒  シミュレーション11時間13分56秒

13位 帝京大学  11時間14分21秒  シミュレーション11時間20分48秒

14位 東京農業大学  11時間15分43秒  シミュレーション11時間18分03秒

15位 神奈川大学   11時間16分37秒 シミュレーション11時間27分30秒

16位 中央学院大学  11時間19分00秒  シミュレーション11時間26分46秒

17位 専修大学   11時間21分05秒  シミュレーション11時間27分36秒

18位 関東学連選抜  11時間21分17秒  シミュレーション11時間19分39秒

19位 上武大学  11時間25分11秒  シミュレーション11時間25分02秒

20位 日本大学  11時間28分00秒 シミュレーション11時間14分35秒

 

優勝した早稲田大については、シミュレーションでは11時間03分18秒で、7区を有力選手の佐々木選手が好タイムで走りきる事が前提になっていました。佐々木選手欠場のなかで予想タイムを3分以上も上回るとは恐るべしです。まさか11時間を切るタイムが本当に見れるとは思いませんでした。

2位の東洋大はシミュレーションは10時間58分25秒でしたので、かなり予想に近いタイムでした。シミュレーションで11時間切りのタイムがはじき出されたときは、あまりに非現実的だと思ってしまいましたが、現実的に11時間切り目前まで迫るとは恐れ入ります。東洋大はとてつもなく早かった、そして実力をきっちり出し切る強さも持っていた。それでも敗れたのですから、これは早稲田大を褒める以外にないでしょう。

3位の駒沢大以下、ほとんどのチームがシミュレーションでの予想タイムを上回るか、ほぼ同水準で走りきりました。なかでもシード権を取った拓殖大、青山学院、国学院の3大学はそれぞれシミュレーションのタイムを9分、7分、13分も上回ってきました。シードに届かなかったけど、神奈川大もまたシミュレーションのタイムを11分も上回っていました。

実力通りに走ったのにシード権が取れなかったのが城西大と山梨学院。城西大はシミュレーション上では相当早いのに、実戦では実力を出し切れないパターンの多いチームでした。今回はシミュレーションのタイムとほとんど同じ水準で走りきっていました。過去3年間と比較してもでもっとも実力を出し切れていたと思います。それなのに11位とシードに手が届かなかったのだから見ていて気の毒になってしまいました。
山梨学院はこれまでの3年間を見てもシミュレーションと近いタイムで走るチームでしたが、今回はほとんど予想通りのタイムでしたが順位は12位。

城西大も山梨学院も、去年の準優勝のタイムを上回っています。去年がちょっとレベルが低い大会だったような気もしますが、それでも前年の2位を上回るタイムで走りきって10位以内にも入れないのですから、今年のハイレベルっぷりはちょっと異常ですね。
シード権を獲得できるラインを、シミュレーションでは11時間15分09秒と予想していたのですが、現実は11時間13分23秒。15分台でもハイレベルなのに、それをさらに2分近くも上回るんですから、やっぱり異常なほどのレベルの高さだと思いました。

出場20チームの中でただ1チームだけ予想を大幅に下回ったのが日大です。国学院とは正反対に予想を13分も下回りました。なにかアクシデントでもあったのでしょうか?シミュレーション上ではまずまずの好タイムが予想されていましたし、1区、2区を勤めた堂本選手とベンジャミン選手がライバルを大きくリードする快走を見せていたのに。実力のあるチームが前半を上手く滑り出したのに、その後に大崩れするというパターンは珍しいと思います。

 

ところで、総合タイムで11時間を切るペースでレースが展開していたと言うのに、テレビ放送ではそのことはあまり触れていませんでしたね。今年の東洋大や早稲田大の走力を考えれば、大会新記録や11時間切りにどこまで迫れるか、夢の10時間台に到達できるのかをテレビでももっと盛り上げてくれても良かったと思うんですけど。

 

注目選手の走りの感想

1区

大迫(早大) 1時間02分22秒 シミュレーション1時間02分23秒

油布(駒大) 1時間04分15秒 シミュレーション1時間02分54秒

2区
ベンジャミン(日大) 1時間07分04秒 シミュレーション1時間06分02秒

村澤(東海) 1時間06分52秒 シミュレーション1時間07分25秒

鎧坂(明大) 1時間07分36秒 シミュレーション1時間07分23秒

平賀(早大) 1時間07分50秒 シミュレーション1時間07分50秒

3区
コスマス(山梨) 1時間02分19秒 シミュレーション1時間02分20秒

矢澤(早大) 1時間03分45秒 シミュレーション1時間03分05秒

5区
柏原(東洋) 1時間17分53秒 シミュレーション1時間16分31秒

早川(東海) 1時間20分27秒 シミュレーション1時間20分47秒

 

1区、2区、3区で大迫選手、平賀選手、コスマス選手のタイムがやたらと当たっちゃいました。特に平賀選手はぴったりシミュレーション通り。これまでで一番予想に近かったのが2秒差でしたが、今回はぴったり当たった選手が1人、1秒差だった選手が2人もいました。

他には1区では油布選手が無難な守りの走りになってしまったのが残念だった。予想タイムより1分21秒も遅いとは・・・。集団にハマってしまうと仕方ないのかもしれないけど、大迫選手に食らいつく姿が見たかったです。

2区では、シミュレーション上で好タイムが出すぎている感じだったので、村澤選手の1時間06分台の爆走には驚かされた。20秒程度シミュレーションでの予想を下回るのではないかと思っていたのですが、下回るどころか33秒も上回ってきた。鎧坂選手とはほぼ互角かと思っていたのですが、明確に上を行く走りでした。
逆に大きく下回ったのがベンジャミン選手。全日本大学駅伝での走りから、区間記録前後のタイムが出るのではないかと思っていたんですが、安全運転の走りで予想よりもマイナス1分でした。前方に平賀選手という良い目標がいたのだから、もうちょっと飛ばしても良かったと思うんですけど。

5区では柏原選手が予想を1分22秒も下回ってしまいました。前回は向かい風が強い中で1時間17分08秒だったのに、今回は今回は向かい風がないのに1時間17分53秒。よっぽど調子が悪かったのかもしれませんね。それでも逆転してトップを奪う辺りは流石でした。

 

 

1区の話

これは普通の感想ですが、

早大と東洋大の優勝争いは、史上最小の21秒の差で明暗を分けていましたけど、実は1区でその両者の差が2分以上もあったというのはちょっと拍子抜けしてしまいます。それも、早大の大迫選手が逃げをうつなかで、東洋大の川上選手は無難な走りに徹して大差をつけられてしまった。結局東洋大はここでついた2分に最後まで悩まされて優勝を逃したような感じだと思いました。

こう書くと川上選手を悪く書いているな感じになってしまいますが、過去の大会を振り返れば、数年前の大会で、優勝候補筆頭だったチームが1区に予定されていた有力選手が使えないという状態になってしまったことがありました。そのとき1区のライバルチームたちは、その優勝候補筆頭のチームが見せた隙を突き、大差を稼ぐために全力で攻める、と思いきや、みんながみんな無難な守りの走りでスローペース。結局わずかなリードしか得られず、そのあと優勝候補筆頭のチームはその層の厚さを生かし、ライバルチームたちを軽くひねって優勝しました。

つまりこれは、優勝争いにおいて例え自分のチームが不利になろうとも、それでもスローペースにハマってしまった集団を打ち壊すというのは難しいということなのでしょう。1区で集団を積極的に引っ張ったり、抜け出して自分でペースを作って走るというのは、ハタから見ている者にはわからない難しさや辛さがあるということなのでしょうね。一番辛い役になってしまったのは川上選手じゃないかなと思います。来年は3区か9区辺りを爆走してリベンジしてもらいたいです。

視点を変えて今回の1区での早大。今から17年前に当時2年生エースだった渡辺監督が1区に起用されたことがありました。大差を稼ごうと積極的に飛ばしたが、ライバルの山梨学院大に粘られ、わずかなリードしか稼げず優勝を逃しました。今回の1区の大逃げからの優勝は、渡辺監督にとって、かつて自分が達成することの出来なかったことへの17年越しのリベンジだったのではないかなと思いました。

 

 

MVPの話

MVPこと金栗四三杯は、東海大の村澤選手が獲得しました。Yahooのトップページのニュースにも報じられていました。これについては全く問題はないと思うのですが、過去の例を見るとどうも今回とは違う傾向があります。

今大会では村澤選手が2区を1時間06分52秒で走り、5区を1時間17分53秒で走った東洋大の柏原選手らを押しのけての受賞でしたが、2年前の大会では2区を1時間06分04秒で走った山梨学院大のモグス選手(※1)が、5区を1時間17分18秒で走った柏原選手(当時1年生)に敗れて受賞できませんでした。この前例と照らし合わせると5区の柏原選手が受賞することになってしまうはずです。

3年前の大会では、やはり2区で区間新記録を出したモグス選手が受賞を逃しましたが、その際に「区間記録を何秒塗り替えたか、その更新幅が大事」と言われていました。この前例に照らし合わせると、今回は4区で区間新を出し、しかも30秒も大幅に塗り替えた帝京大の西村選手が受賞するのがふさわしくなります。

今回スポーツ報知にて、17人抜きが評価されて村澤選手が受賞したと書かれていましたが、何人を抜いたかがMVP選考の基準になるなんて今まで一度もきいたこともないんですけど。

チームへの貢献度などで選ばれているとしたら、別に区間1位選手を対象にしなくても良いはずですし。今大会で言えば早大で6区を2位で走った高野選手なんて貢献度は絶大だったでしょうし。

箱根駅伝MVPはYahooのニュースにも扱われるほど世間でも注目されている賞なのに、それを与える基準が毎回コロコロ変わってしまうのは問題じゃないですかね?。違う区間同士の選手を比較するなら、例えば2区の1時間07分00秒と5区の1時間18分00秒は同じ価値である、みたいな明確な基準みたいなのをもうけて欲しいです。

繰り返しになりますが、今大会の村澤選手の受賞には全く文句はありません。個人的に2区のナンバーワンが大会のナンバーワンだと思っていますので。ですが、今大会のMVPの選考が納得いけばいくほど、数年前にモグス選手が受賞できなかったのは人種差別ではないのかと疑ってしまうんですよ。MVPは日本人選手のみに与えるとは決まっていないはずですし。

来年以降も今年のように納得のできる選考をしてもらいたいものです。

今大会は最高のレベル、最高の接戦、最高に納得のできるMVP選考と本当に素晴らしい大会でした。

 

(MVPの話を書き直しました。数年前の話を持ち出して批判してばかりの暗い内容でしたので。最高の大会の感想にふさわしくありませんでした。大のモグスファンでしたので、MVPのことになるとどうも無駄に熱くなってしまいました)

※1 モグス・・・2006年大会から2009年大会まで山梨学院大学の選手として箱根駅伝を走ったメクボ・ジョブ・モグス選手のこと。箱根駅伝で史上最強のランナーとまでいわれ、3年生と4年生の時に区間新記録を連発したが、MVPには一度も選ばれなかった。

 

 

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