2016年大会の感想 (2)

普通の感想です



青学大について

データ上で圧倒的な強さを誇る青学大が圧勝するという大方の予想どおりの結果となりました。

1区区間賞からの優勝はまさに横綱相撲です。これは最高の勝ち方でしょう。

見てる方は少し退屈かも知れませんが、視聴者がハラハラドキドキする展開はあまり良い勝ち方とは言えませんので。

青学大のタイムは、去年よりも4分ほど遅いですが、山の神野選手が去年よりも3分遅く、全体的に気温が高かった事も考慮すれば、5区以外の区間は去年以上だったかも知れません。

勝負はもう最初の3区間でついてしまった感じですが、1区の久保田選手と2区の一色選手は元々実力者ですが、3区の秋山選手には驚かされました。

1万mのベストタイムが28分58秒の秋山選手ならば、5kmの通過は14分45秒くらいに設定し、東洋大の服部弾馬選手に追い抜かれてもペースを乱さず走り、64分を切る区間タイムを目指して、東洋大との差を最小限に食い止める、というのがあの状況での箱根駅伝の定石かと思います。

現実には5kmを14分15秒で突っ込み一気に東洋大を引き離し、その後もハイペースを維持し続けて、最終的には区間タイムは62分24秒を記録。スーパーエース級の走りを見せてくれました。

秋山選手の実際の走力は1万m28分10秒台くらいじゃないでしょうか。

来シーズンは、有力選手が卒業しますが、新戦力も育っているようですし、一色選手と秋山選手を合わせて、2区+3区を2時間10分切りで計算出来るのはライバルチーム達にとってかなり驚異でしょう。
スーパーエースが2人いないと出せない領域のタイムですから。

秋山選手の走りは、来シーズンのライバルチーム達の作戦、チーム作りにもプレッシャーを与える物だったと思います。



謎の突風

風が強く吹く年は、往路全体が向かい風、復路全体が追い風とわかりやすく吹く事が多いのですが、今大会では特に5区で部分的に異様な突風が吹いていました。

強風が吹いたと思えば次の場面では穏やかになっていたりと差が激しくて、タイムにどれくらいの影響を与えたのか判断が難しいです。

5区では風がマイナスになったのは間違いないと思うので、日大・キトニー選手のタイム1時間18分24秒は、「山の神の領域」18分切りに到達していた可能性もあると思います。



東京国際大の健闘

10位のチームの11時間10分切りというポイントに注目しているので、各中継所や、各区間の各定点に、総合タイム11時間10分切りペースというのを勝手に設定して観戦しています。

今大会では初出場の東京国際大が、その11時間10分切りペースから少し遅れるだけのペースで、3区4区5区6区と走り続けていました。

2区のスタンレイ選手はともかく、3区〜6区の健闘ぶりには驚かされました。今回不完全燃焼だったスタンレイ選手を含めて2区〜6区の5人はまだ3年生以下なので、来年も期待出来るチームになりそうです。



2区について

去年に続いて花の2区を制した東洋大・服部勇馬選手。

山梨学大・ニャイロ選手に勝っての区間賞ですから、去年以上に価値がある区間賞と言えます。

2区の区間賞を2度獲得した日本人選手は、90年代に活躍した早大・渡辺選手以来で、現行コースに限れば日本人では20年ぶり2人目になります。

対照的に、もう1人の2区区間賞複数個獲得に挑む資格のあった早大・高田選手は下位に沈みました。

一昨年2年生で2区区間賞を獲得し、3年生の去年は区間6位、そして4年生の今大会は区間17位となった高田選手の戦績を見ると、2区の区間賞を2度獲得することの難しさが伝わって来る気がしました。
 
服部選手は67分切りのタイムを出す事は出来ませんでしたが、去年も含めて2年連続の68分切り、一昨年も含めれば3年連続69分切りを達成しました。
これも十分に箱根駅伝の歴史に残るレベルの偉業と言えます。



トップ独走ながら、服部選手やニャイロ選手の派手な追い上げの影響でやや地味な走りに見えてしまった青学大・一色選手。

区間タイムは去年に続いて68分切りを達成。最後の箱根になる来年は3年連続の68分切りがかかります。

達成出来れば日本人では史上初の大偉業になります。



全日本のエース区間で活躍した2人のスーパールーキー、山梨学大・ニャイロ選手&順大・塩尻選手が箱根のエース区間でも順当に活躍しました。

全日本8区1年生歴代1位のニャイロ選手が箱根2区でも1年生歴代1位、全日本2区日本人1年生歴代3位の塩尻選手が箱根2区で日本人1年生歴代4位となり、本当に順当な結果に収まりました。

塩尻選手の68分30秒は順当なタイムですが、ニャイロ選手の67分20秒は前半の無理なオーバーペースがなければ67分切りも狙えたのではないかと思いました。

それでも、ラスト3kmの一番きつい所を前に服部選手に引き離された時は、大ブレーキになるのではないかと思いましたが、粘ってペースダウンを僅かに留めたのは見事と感じました。



コース変更と大記録の記憶

1999年大会で生まれた3大区間記録。

2区順大・三代選手の66分46秒

4区駒大・藤田選手の60分56秒

6区神奈川・中澤選手の58分06秒

日本人では誰も破れないまま今年で17年も経ってしまった偉大な記録ですが、そのうちの1つである6区の記録が、今大会において日体大・秋山選手の走りでやっと上回ったかと思います(詳しくはマニアック編をどうぞ)。

しかし、秋山選手の陸上雑誌のコメントを見ると、駒大の千葉選手の記録は意識していたようですが、中澤選手については全く名前が出ていませんでした。

今大会で2区区間賞の服部選手は、「日本人最高タイムを上回る走りが出来れば(トップの青学大に)追いつけたかも知れません」と陸上雑誌にコメントしている事から、三代選手の記録を意識していた事がわかります。

2区の記録は正式な日本人最高記録として残っているのに対して、4区と6区はコース変更により事実上の最高記録という扱いですから、選手達も意識の仕方が違うのでしょう。

やはり偉大な記録は正式な形で残して欲しいと思います。

その方が新しい大会で出た区間新記録の価値も上がるはずです。

来年から4区と5区のコース変更がされる予定ですが、それ以降はどうしても仕方ない場合以外はもうコースは変えないで欲しいです。



王者に勝ったチーム

今シーズンは圧倒的な戦力を持つ青学大の3冠は確実というムードで始まりました。

終わってみれば、青学大は2戦目の全日本で東洋大に破れ、2冠に終わりました。

青学大が破れた大会が全日本だったというのは興味深いです。

比較的、全日本は順当な結果になりやすい大会で、箱根は何が起こるかわからない大会と言えます。

それだけに、圧倒的な戦力を誇る青学大がもし負けるならば箱根しかないと思っていました。

それが順当な結果になりやすい全日本で東洋大が勝ったのですから、それだけ全日本で見せた東洋大の気迫、戦略が優れていたという事なのでしょう。

箱根では青学大の圧勝に終わりましたが、青学大が強ければ強い程「全日本で」東洋大が勝った事には価値があると思います。

10年、20年経っても、絶対的な王者に対して挑むチームには、2015年全日本の東洋大のような走りを!って言われるんじゃないでしょうか。

大学駅伝界のレジェンドになりそうな気がします。





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