2013年大会 華の2区の戦い

 

山梨学院大・オムワンバ選手

今大会の目玉はなんといっても山梨学院大学の新留学生・オムワンバ選手。すさまじいまでの才能を感じます。

オムワンバ選手は、今シーズンは出雲駅伝のアンカーで区間賞、全日本の2区で区間賞といきなりのエース区間で連続区間賞ですが、その走りのペース配分は明らかにおかしく、かなり荒削りな走りと感じます。しかし無駄がかなり多いにもかかわらず、圧倒的な走力で結果を残しています。

この才能は2009年に卒業したモグス選手を超えるかもしれません。

 

オムワンバ選手は全日本の2区では区間記録を22秒も一気に更新しました。全日本の2区の区間記録は1997年に早稲田大学の梅木選手が記録を出して以来、数秒から大きくても10秒ちょっとの単位で更新されてきました。有力選手が集まる全日本の2区でも非常にチビチビとしか更新されてこなかったのです。

ほぼ限界に達したかと思われた区間記録を、一気に22秒も塗り替えたのですからオムワンバ選手の非凡さがうかがえます。明らかに今までの選手とは「持っているモノ」が違うと感じさせられました。

しかも走り終わった後の陸上雑誌へのインタビューでは、あと数十秒は早く走る予定だったとコメントしたそうです。

オムワンバ選手は元は中距離選手との事ですから、距離が長く登り坂のキツイ箱根の2区に登場するかはちょっと微妙ですが、是非とも2区を走って欲しいと思います。

 

 

青山学院大・出岐選手

前回の2区を制した青山学院大の出岐選手は、今大会では2区の06分台、特に日本人選手の2区最高記録である順天堂大の三代選手が残した1時間06分46秒の更新を期待したい所です。

出岐選手は今年はケガの影響もあるそうですが、「前回2区区間賞」という最強のランナーを意味する勲章を持つ選手だけに、今大会でも活躍を期待したいところです。

 

2区で区間賞を取る日本人選手は4年生が多いので、前回の2区で区間賞を取った日本人選手が翌年また2区に出場するというケースは珍しいです。

現在のコースになった83年以降の例で「現在のコースで区間賞を取り翌年も2区に出場」という条件を満たしている日本人選手は、過去に4例しかありません。

87年、88年 只隅伸也(大東大)  1時間08分38秒(区間賞)→翌年1時間11分37秒(区間6位)

92年、93年 本川一美(順天堂大)  1時間08分07秒(区間賞)→翌年1時間19分16秒(区間15位)

95年、96年 渡辺康幸(早稲田大)  1時間06分48秒(区間賞)→翌年1時間06分54秒(区間賞)

11年、12年 村澤明伸(東海大)  1時間06分52秒(区間賞)→翌年1時間08分14秒(区間3位)

この中で連続で区間賞を取ったのは渡辺選手だけです。

また、4選手全員が前回よりもタイムを落としています。

オムワンバ選手やベンジャミン選手が実力をフルに発揮すると、ちょっと出岐選手の2年連続区間賞は難しいかも知れませんが、前回区間賞のタイム1時間07分26秒よりも良いタイムで最後の2区を走りきって欲しいと思います。

 

 

東洋大・設楽啓太選手

前回2区で区間2位の東洋大の設楽啓太選手。前回は後半になって驚異的な伸びを見せましたが、今シーズンは全日本大学駅伝の2区で、前半から猛烈なペースで飛ばして、最初はオムワンバ選手すら寄せ付けないほどのスタートダッシュを見せました。

後半に強い選手が前半から飛ばせるようになったのですから、今回の箱根の2区でその成長が具体的にどれくらいのタイムの更新として現れるのかが楽しみです。

前回の出岐選手と同じペースで権太坂までを走り、権太坂から戸塚中継所までを前回の設楽啓太選手のペースで走れば、1時間07分08秒になります。

もしかすると、今大会2区に出場する日本人選手の中で06分台に最も近い選手はこの設楽啓太選手かもしれません。

 

 

他にも、前々回の2区を区間2位で走った日大のベンジャミン選手、全日本の2区でオムワンバ選手と僅差で走った早稲田大の大迫選手、全日本の8区で快記録で逆転優勝の走りを見せた駒沢大の窪田選手と、超有力選手が目白押しです。

もし全員が2区へ出場すれば6分台、7分台の大競演が見れるかもしれません。

過去10年間の2区の区間上位5人の平均タイムを調べてみました

2003年 1時間08分08秒00

2004年 1時間09分32秒00

2005年 1時間08分36秒20

2006年 1時間08分45秒20

2007年 1時間08分10秒60

2008年 1時間07分38秒00

2009年 1時間07分44秒80

2010年 1時間08分23秒00

2011年 1時間07分27秒40

2012年 1時間08分15秒00

今大会の2区のレベルなら、オムワンバ選手の出来次第では、近年で最も区間上位5人の平均タイムの良かった、2011年大会の1時間07分27秒40を超えるかもしれません。

しかしハイレベルであればあるほど、村澤選手が2013年大会に出場できないのが本当に残念です・・・。現役選手で唯一の2区06分台ランナーだったのに。

2013年大会では新たな06分台ランナーの誕生を、出来れば複数の選手で期待したいです。

 

 

オムワンバ選手・箱根2区の予想タイム

山梨学院大のオムワンバ選手が、箱根2区に出場すると仮定した場合のタイムを予想してみました。

過去に1年生で全日本の2区で39分以内の記録を出し、そのシーズンの箱根の2区を走った選手をピックアップし平均タイムを出してみました。

過去に5例あったので、その平均タイムからオムワンバ選手のタイムを予想してみました。

 

村山謙太(駒大) 38分23秒 1時間09分04秒

村澤明信(東海大) 38分25秒 1時間08分08秒

宇賀地強(駒大) 38分28秒 1時間09分56秒

渡辺康幸(早大) 38分51秒 1時間08分48秒

伊達秀晃(東海大) 38分58秒 1時間08分04秒

平均タイム 全日本2区38分37秒00 箱根2区1時間08分48秒00

箱根2区の平均タイム÷全日本2区の平均タイム=1.7816141562

 

オムワンバ選手は全日本の2区を37分16秒で走っているので、そのタイムに上記の数値1.7816141562を掛けると、箱根2区の予想タイムは1時間06分23秒(小数は切り捨て)になります。

現在の箱根2区で、歴代で2番目に良い記録がモグス選手の1時間06分23秒ですから、それに匹敵するタイムが予想されています。

オムワンバ選手の走力は、すでに箱根2区の歴代2位レベルにあるのかもしれません。

しかし、1年前までは中距離選手だったというオムワンバ選手に、タフな箱根の2区でその走力を出し切れるのか。力は申し分なくても、その力を出し切れるかどうかの「強さ」の点が気がかりです。

 

 

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