2012年箱根駅伝の予想

箱根駅伝のシミュレーション予想です。火川勇気の勝手な予想も交えてお伝えします。

(2011年12月31日時点での予想です)。

 

昨年と同じく、駅伝SLGというフリーソフトを使って予想しています。

駅伝SLGは選手の1万メートルのベストタイムを元に各区間のタイムを予想するソフトですが、火川勇気独自の考え方に基づき、

(1)20キロやハーフマラソンのベストタイム

(2)前シーズンの箱根駅伝の区間タイム

(3)今シーズンの全日本大学駅伝の区間タイム

以上の三つのデータから選手の1万メートルの事実上の走力を予想し、実際の1万メートルのベストタイムより良かった場合はそちらを採用してシミュレーションを行いました。

シミュレーションは5回の平均値を1戦と数え、合計5戦行いました。5戦の中で3番目に当たるタイムを予想タイムとしました。

 

出場選手については、12月29日に発表された区間オーダーを元にしています。明らかに出場しそうなリザーブの有力選手は、予想される区間に出場する事を前提にしています。

 

 

シミュレーション順位とタイム ()の中は5戦の中の最高タイム

1位 駒沢大学    10時間57分32秒 (10時間55分40秒)

2位 東洋大学    10時間58分59秒 (10時間58分24秒)

3位 早稲田大学   11時間01分07秒 (10時間59分25秒)

4位 明治大学    11時間08分43秒 (11時間07分11秒)

5位 東海大学    11時間10分03秒 (11時間09分32秒)

6位 関東学連選抜 11時間10分13秒 (11時間06分38秒)

7位 中央大学    11時間11分16秒 (11時間09分29秒)

8位 東京農業大学 11時間15分05秒 (11時間14分01秒)

9位 日本体育大学 11時間15分41秒 (11時間15分30秒)

10位 城西大学    11時間15分49秒 (11時間15分16秒)

11位 拓殖大学    11時間16分13秒 (11時間15分17秒)

12位 青山学院大学 11時間16分51秒 (11時間16分01秒)

13位 国士舘大学   11時間18分15秒 (11時間17分42秒)

14位 上武大学    11時間19分03秒 (11時間16分32秒)

15位 山梨学院大学 11時間19分57秒 (11時間17分19秒)

16位 順天堂大学   11時間21分19秒 (11時間14分09秒)

17位 國學院大學   11時間21分33秒 (11時間19分25秒)

18位 神奈川大学   11時間23分08秒 (11時間20分19秒)

19位 帝京大学    11時間23分13秒 (11時間22分07秒)

20位 中央学院大学 11時間29分51秒 (11時間27分30秒)

 

 

やはり優勝争いは駒大と東洋大の2強対決の線が濃厚です。両校とも現実の大会記録を上回るタイムが予想されました。

早大は実力を発揮できれば2強に匹敵するのですが、どうも今期はチームの状態が良くなさそうです。

 

明大、東海大、学連選抜、中大の4位〜7位は大差なく、逆に7位と8位がなぜか4分も空いてしまうという結果になりました。

「史上最強の選抜チーム」と言われた今期の学連選抜も4位を狙える位置にいるようです。

 

8位〜15位くらいまでは大混戦になりそうです。どこがシードを取ってもおかしくはないと思います。

16位以下では中央学院大だけはシミュレーションではぶっちぎりの最下位になってしまいましたが、現実ではおそらくここまでの差はつかないと思います。

 

 

注目選手の予想タイム

総合タイムと同様に、5回の平均値を1戦とし、5戦の中で3番目のタイムです。()の中のタイムは5戦の中での最高タイムです。

 

1区
大迫 (早大) 1時間02分04秒 (1時間01分41
秒)

撹上 (駒大) 1時間02分27秒 (1時間02分04秒)

服部 (日体) 1時間02分33秒 (1時間02分08秒)

宇野 (東洋) 1時間03分25秒 (1時間03分05秒)

 

1区は早大の大迫選手と駒大の撹上選手の戦いになりそうですが、日体大の服部選手もかなり迫ってきそうです。

東洋大の宇野選手も安定感のある選手です。トップグループのペース次第では、宇野選手も食らいつく事が可能でしょう。引っ張られて行けば1時間02分台のタイムが出ても不思議ではありません。

 

 

2区
村澤 (東海) 1時間06分43秒 (1時間06分25秒)

鎧坂 (明大) 1時間06分43秒 (1時間06分37秒) ※現段階では補欠だが2区に起用されると予想

出岐 (青学) 1時間07分30秒 (1時間07分12秒)

平賀 (早大) 1時間07分53秒 (1時間07分40秒)

設楽(啓) (東洋) 1時間08分02秒 (1時間07分54秒)

村山 (駒沢) 1時間09分06秒 (1時間08分04秒)

 

現在の大学長距離界の両雄、村澤、鎧坂の両選手が奇しくも同タイムと予想されました。最高タイムでは村澤選手に分があるようです。

平賀、設楽啓太の早大、東洋大の両選手は、2011年大会で現実に出したタイムとほとんど同じようなタイムが予想されています。青山学院大の出岐選手は昨年よりもタイムを伸ばす事が予想されています。

駒大のスーパールーキー村山選手は1時間09分台という物足りないタイムが予想されてしまいました。最高タイムは1時間08分04秒ですから、こっちのタイムが現実的な目標になりそうです。日本人1年生最高記録が全く同じ1時間08分04秒(2005年大会で東海大・伊達が記録)ですから、どこまで迫れるかが期待したいです。

しかし今回の2区。村澤、鎧坂、平賀、設楽啓太の4選手がそろって前哨戦の全日本大学駅伝でイマイチだったのが気にかかります。実力を発揮できればシミュレーション以上のタイムも狙えると思うのですが。

 

 

3区
コスマス (山学) 1時間02分01秒 (1時間01分36秒)

モゼ (拓大) 1時間02分34秒 (1時間02分07秒)

油布 (駒大) 1時間02分57秒 (1時間02分23秒)

矢澤 (早大) 1時間03分40秒 (1時間03分24秒)

設楽(悠) (東洋) 1時間04分00秒 (1時間03分41秒) ※現段階では補欠だが3区に起用されると予想

 

3区はコスマス、矢澤、設楽悠太の3選手は前回大会で現実に出したタイムとあまり変わりらないタイムでした。コスマス選手がちょっと伸びていますが、区間記録(1時間01分40秒・2009年大会で早大・竹澤が記録)に届くかは微妙。

3区初登場となる駒大の油布選手は駒大の1万メートル歴代最速の選手。その走力を生かしてライバルの東洋、早大を1分程度上回ると予想されています。

拓大のモゼ選手はデータがほとんどなく、1万メートルのベストタイムから単純に予想しただけでした。

 

 

5区
柏原 (東洋) 1時間17分19秒 (1時間16分41秒)

大江 (明大) 1時間19分54秒 (1時間19分33秒)

早川 (東海) 1時間20分34秒 (1時間20分08秒)

山本 (早大) 1時間21分11秒 (1時間19分50秒)

井上 (駒大) 1時間21分25秒 (1時間21分08秒)

 

5区の大本命は説明不要の柏原選手。1時間17分19秒と予想されています。この区間の現実の区間記録は柏原選手が2年生の時にマークした1時間17分08秒。この時は向かい風の中で作った記録でした。()内のシミュレーション上の最高タイムの方が現実的な目標になりそうです。

明大の大江選手、東海大の早川選手は前回大会の現実のタイムと、ほとんど同じタイムと予想されました。

駒大の井上選手はタイム以前に、故障上がりで本当に走れるのかは不明です。補欠に入っている他の選手が走る可能性が高そうな気がするのですが。出場できるならば経験者の井上選手が走るのがベストオーダーだと思うのですが。

早大の1年生山本選手は1時間21分ちょっとの無難なタイムと予想されていますが、高い走力をもつ選手だけに、()内のシミュレーション上の最高タイムは1時間20分を切っています。怖いもの知らずの1年生だけに、案外、明大の大江選手や東海大の早川選手よりも爆走する可能性は高いかもしれません。今回早大が駒大、東洋大の2強を破れるかのキーパーソンになりそうな予感です。

 

 

9区
窪田 (駒沢) 1時間08分31秒 (1時間08分11秒) ※現段階では補欠だが9区に起用されると予想

田中 (東洋) 1時間09分49秒 (1時間09分34秒)

 

駒大の真のエース・窪田選手と、前回9区を制覇した東洋大の田中選手の戦いは、おそらく1分以上は窪田選手が上を行くと予想。それだけ窪田選手の走力は秀でていると思います。

窪田選手はおそらく9区の区間記録(1時間08分01秒・2008年大会で中央学院大・篠藤が記録)を目指すでしょう。

この辺りの区間まで来ると、駒大、東洋大の2強の一騎打ちになっていると思います。この9区が勝負の分かれ目になるかもしれません。

 

 

 

以下は火川勇気の勝手な考察、というか感想のような物です

 

東洋大・柏原選手について

箱根駅伝史上最も偉大なクライマー・東洋大の柏原選手もついに最後の箱根駅伝をむかえます。

初代山の神・今井正人選手と比べて、どっちが偉大かと言われれば少し悩みますが、私は柏原選手だと思う。

タイムだけを見ると、もしかしたら今井選手の2年生の時は柏原選手よりも速かったかもしれない。しかし柏原選手の凄いところは表面的なタイム以上に精神的な凄さにあると感じるのです。

 

以下は今井選手と柏原選手の5区の中盤〜ゴール地点までの比較です。

箱根の山の中腹にある大平台のポイントから芦ノ湖のゴールまでのタイムをまとめてみた物です

今井(2年) 2005年 46分44秒 ※この年までは大平台のポイントは走り出してから7キロ地点

今井(4年) 2007年 48分01秒 ※大平台のポイントは走り出してから9.5キロ地点

柏原(1年) 2009年 47分51秒

柏原(2年) 2010年 47分27秒

 

今井選手2年時はまだコースが全長20.9キロだった頃です。翌年以降スタート地点が2.5キロ後方に移動し、全長23.4キロのコースになりました。

今井選手2年時は7キロ走った後の13.9キロのタイム。

それ以外は9.5キロを走った後の13.9キロのタイム。

今井選手が2年生のときが圧倒的に速いが、「走っている総距離が短いんだから、体力の消耗も少なくなって、タイムが良いのは当たり前」と思う人も多いかもしれません。

しかしそれにしても速すぎる。というよりも、今井選手が4年生の時がペースが落ちすぎていると感じるのです。

いくら2.5キロ多く走った後のタイムでも同一の距離、コースで1分17秒も遅いのは落ちすぎです。

今井選手が本来の実力を100パーセント発揮すれば9.5キロを走った後の13.9キロのタイムでも、47分10秒か、悪くても47分20秒くらいでは行けたのではないかと感じます。

今井選手の2年時と4年時のレース展開を比較するとその理由がわかります。

2年時は15位で襷を受け取り、4位まで上がる展開でした。つまり最後の最後まで目標があり、モチベーションを維持しやすい状況でした。

それに対して4年生の時は、大平台を過ぎて7キロを超えた辺り(5区の総距離の中で16キロ付近)で、先頭の大学を抜き去り、単独のトップへ。つまり、大平台〜芦ノ湖の13.9キロの内、ほぼ半分は単独のトップで目標がない状態で走っていました。

 

話を柏原選手に戻します。

柏原選手は1年時は9位でスタートし前を行く選手を次々に抜き去り、終盤には早大と激しいトップ争いを演じて、そして逆転優勝をしてゴールに飛び込んでいます。その時の大平台〜芦ノ湖のタイムが47分51秒。13.9キロの間は目標をもって走っている状態か、トップ争いをしている状態かで、モチベーションを維持しやすい展開でした。

しかし個人的に柏原選手の最高の走りと感じた2年時は、1年時とはまったく違う展開でした。7位でスタートし、トップを捉えたのは13キロ地点付近。大平台〜芦ノ湖の13.9キロで言えば、3キロちょっとを目標を持った状態で走り、残り10キロ以上は単独のトップで、目に入る目標はなにもないという状態でした。

加えて、この年は向かい風が強く、好タイムは出辛い状況でした。

しかし柏原選手はこの好タイムが出辛いレース展開、気象条件をすべて跳ね返し、前年の自分を上回る47分27秒で走りきっているのです。

山の神といわれた今井選手ですら、目標がない状態では大きくペースが落ちているのに、柏原選手は「前年の自分に負けたくない」という思いをモチベーションに走りきれてしまう。

柏原選手は前半からガンガン飛ばすタイプであり、後半にはペースが落ちやすいはずなのに、それでも意地でもペースを落とさない。そしてそのままゴールまで走りきってしまう。

これほど心が強い選手は他に見た事がありません。

間違いなく箱根駅伝の山登りの5区の歴史の中で史上最高のランナーだと思います。最後の箱根は是非1時間16分台の記録を打ち立てて、有終の美を飾って欲しいです。

 

 

青山学院大・出岐選手について

1年生の時に1区で予想外の快走をし、監督から「出岐の出来がデキ過ぎた」と冗談を言われた出岐選手。今ではすっかり出来て当たり前の男に成長し、トップクラスのランナーとして定着した感があります。

トラックの1万メートルでは29分台のベストタイムであり、トップクラスの証明である28分台には届いていないのに、現実の駅伝では快走を連発。とにかく勝負強い。

史上最強の29分台ランナーといえば、早大の梅木蔵雄選手が思い浮かびますが、出岐選手は梅木選手を超えるかも知れません。

梅木選手は1997年〜1998年のシーズンで全日本大学駅伝の2区で38分05秒の当時の区間新記録を出し、箱根駅伝では2区を1時間07分48秒のタイムで走破して区間賞を獲得しています。

箱根の2区で、29分台の持ちタイムのランナーが1時間08分を突破したという例は、梅木選手の他には前回の出岐選手しかいません。

出岐選手の前回のタイムは1時間07分50秒。梅木選手が出したタイム1時間07分48秒まではたったの2秒差です。

今期の出岐選手は全日本大学駅伝では2区を走り、37分43秒という超ハイレベルなタイムで走破しているだけに、箱根もかなり期待できそうです。史上最強の29分台ランナーの座は目前に迫っているかもしれません。

 

 

中央大学について

安定感抜群のチーム。しかしなかなか上を狙えない・・・。かつて万年3位とか万年4位といわれ続けていた中大だけど、今ではこれは逆に褒め言葉かもしれません。

なにせ2006年に優勝した亜細亜大が予選落ちして出場すら出来ず、2000年代に入って2度優勝した順大も今年は3年ぶりにやっと出場、駒大ですら近年は13位に沈んだ事もあったりと、現在の浮き沈みの激しい箱根駅伝で常に10以内をキープし続ける中大は凄いとしか言いようがない。

今年もシード権は堅いと予想しています。

1区を走る西嶋選手が、前回の箱根駅伝、今期の全日本大学駅伝と共に1区で好走していて、今後名スターターになりそうな予感がします。97年〜99年の大会で3年連続で1区5位という成績を残した久保田瑞穂選手に近い物を感じます。

余談ですが、1区をスタートしてすぐ先にある角を左に曲がる際に、「真っ先に角を曲がった選手が1区を制する」、というジンクスは久保田選手が言った言葉だったと記憶しています。

今年獲得すれば28年連続のシード権。私が駅伝マニアになるきっかけだったチームだけに、中大には是非がんばってもらいたいです。

 

 

順天堂大学について

今回はとにかく、来年以降は順大が不気味に感じます。今回も16位とあまり良くない順位が予想されていますけど、シミュレーション上の最高タイムだけをみると中々良い。潜在能力はかなり高そうです。

1万メートル28分台が3人、29分ヒトケタ〜10秒台の選手が4人と合計7人が29分20秒以内の走力を持っていて、しかも4年生はこのうち1人だけ。経験を積めば来期以降一気に来るかもしれません。

順大といえば1999年の大会。山梨学院、神奈川大、駒大が3強で、頭文字をとってYKKと言われた大会で、そのシーズンの全日本大学駅伝で8位でまったくノーマークだった順大が、2区を走った三代直樹選手の区間新記録で一気に波に乗り、YKKを撃破して優勝をかっさらいました。

その6年後の2005年大会では「初代・山の神」今井正人選手が突然5区に登場し、超走を見せました。

順大は数年に一度、わかった気になっている私のような駅伝マニアのドギモを抜く事をやってくれます。そろそろ順大がまたなにかをやってくれそうな気がします。

 

 

 

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