関東完全引退から1年
この1年は仕事に追われ、趣味も忙しく、ナンパについて振り返る余裕はなかった。
新宿にやってきた火川勇気。この街に来るのは約1年ぶり。
久しぶりに新宿を歩きまわりたくなった。
昔と同じように、西新宿4丁目付近の夜間はタダのパーキングメーターに車を停めて、繁華街に向かって歩き出す。
そそり立つ高層ビルを眺めながら歩を進める。
西新宿3丁目、西新宿2丁目と進み繁華街が近づいてくる。
ここまで徒歩15分。結構遠い。
現役時代は繁華街が近づいてくると胸の鼓動が高鳴った(悪い意味で)。
西新宿1丁目に入るとすぐ先には、ついに繁華街の入口が見える。
飲食店、商業施設、様々な店が入り乱れる西新宿。
ちょっとした都市の中心繁華街並の規模を誇るが、ここは新宿の一部分に過ぎない。
この先にある巨大ターミナル新宿駅は、複雑な駅構内と地下街が合わさって、さながら迷路、迷宮の類だ。
駅の反対側は、町名から西が取れて新宿3丁目、新宿4丁目。
有名なアルタや紀伊国屋、伊勢丹があり、甲州街道の南にはタカシマヤもある。
去年にはミライナタワーなんて物も出来ていた。
こちら側は西新宿を上回る規模があり、新宿繁華街の中心だ。
新宿3丁目の東には有名な新宿2丁目もあり、北には言わずと知れた歌舞伎町がある。
歌舞伎町のさらに北側は途切れる事なく新大久保の街に繋がっている。
日本一の繁華街、新宿。
私がこの街でナンパする時に、よくスタート地点としていたのが、西新宿1丁目の繁華街の入口だった。
ここ
現役時代はこの入口が見えて近づいてくると、死刑台に近づく死刑囚のような気分だった。
ついた時には毎回、破裂しそうな心臓と、胃液が逆流しそうな胃を抑えて飛び込んでいった。
なんとも大袈裟である。別に死ぬわけじゃないのは頭ではわかっているのに、体は毎回こんな感じ。
いつまで経っても慣れる事はなく、馬鹿みたいに大袈裟に気合いを入れて空元気を出さないと、この先にはとても進めなかった。
情けなくも逃げた事もあった。
当時使っていたスマホは、ブラウザのタブが4つまでしか使えない貧弱な物だったが、その内の1つには大抵ナンパブログが入っていた。
師匠であるFさんのブログ、ひきこもりからナンパ師になった夏目涼介さんのブログ、それに途中からは同門のナンパ師Nさんのブログも加わった。
1人のブログを読み終えたら次の人のを読み、3人目まで読み終えたらまた1人目に戻ってと、延々とこの3人のブログを読み続けていた。
ナンパに向かない性格をしている私がモチベーションを維持するためには彼らの力が必要だった。
しかし、時には逃げる口実にもなってしまい、繁華街入口付近の場所で気合いを入れる為にスマホでブログを読み、そのまま1時間以上経過。
今日はもう遅いから帰るか、と。
当時の体験記に書いていなかったが、そんな事もあったりする。
街を歩きながら過去を振り返る。
新宿以外の場所でもナンパはしたが、やっぱり新宿が一番思い入れがある。
この街で凄く好みの人と出会った事もあった。
その人とはしばらくセフレみたいな関係が続いた後に別れている。今まで書いていなかったが、最後は泣かせてしまった。
その人が忘れられなくて、似たような人を探していた時期もあった。今だから言える女々しい思い出。
他にもこの新宿には、手が届きそうのない美女と仲良くなっては自分から逃げた思い出もあったっけ。
今はただの笑い話だと思っているが、あの時は落ち込んだ。
後悔はしていないが、現役の7年間の中で判断ミスは多かった。
歩き出して1時間以上が経過。駅の東側でベンチに座ってひと休憩。やっぱり新宿はでかい。
相変わらずの賑やかさとゴチャゴチャ感。華やかなカオス。
久しぶりだとちょっと疲れる。
初めて新宿でナンパをした日を思い出す。
あの日は私が初めて新宿の街をじっくりと見て歩いた日でもあった。
地元の川崎もでかい街だと思っていたけど、新宿はその2倍か、3倍か、4倍か、いやそれ以上かと、いったいどこまで街が続くのかと不安になる程だった。
でかさも賑やかさも段違い。そんな新宿の街の凄さと、その街で自分がナンパなんてしている事に興奮したのか、自分が街と一体化していく様な不思議な感覚を感じた。
その新宿の街を歩いても今はもう何も感じない。
休憩中にも目の前を多くの人が通り過ぎていく。その人の流れを見て思う。
現役時代は、ルックスの良い女性、酔っ払っていそうな女性、ファッションのおかしい女性、いかにもな風俗嬢、そういう人を見つけた時に声をかけれないと、敗北感ともったいない感、出来るのにやらない自分に怒りと罪悪感まで感じて、かなりストレスだった。
引退後もしばらくは引きずっていた感覚だったが、平穏な1年間のおかげなのか今はもう何も感じない。
平和で実に素晴らしいが、たまに何も感じないのを寂しく思う事もある。特にここでは。
再び歩き出して、タカシマヤ、ミライナタワーの辺りをまわった後に、西新宿方面に。
今回新宿を散歩なんてしてるのは、ナンパについてちょっと振り返っておきたい事があったから。
街を歩きながらだと考えがまとまりやすい。
私は去年の引退後、それまでお世話になったナンパブログを読み返していた。
ナンパを引退した者の視点で読むと、読み慣れたブログもそれまでとはまた違った魅力があった。
特に師匠であるFさんのブログは、ボリュームがあり過ぎて1年経った今でもまだ読み終わっていないが、その中に見つけた言葉に衝撃を受けて、自分のナンパについて見つめ直さないといけないと感じた。
はっきり言って私は間違っていたのだろう。
1年とちょっと前。10人ゲットのレベルをクリアする直前。私は伊勢原市の地味な街で、ド派手な女性Nちゃんと出会った。
普段ならばナンパに関係する事に時間を使うのは週末だけと決めていたのに、私はNちゃんとは平日に2回も会っていた。
それだけ期待してしまう相手だった。
体験記には恥ずかしくて書いていなかったが、ユウキくん本当にかっこいいねとか、かなり褒められていた。
これはいけると思い、カラオケ屋に連れ込んで迫って、結果は当時HPに書いた通り。
かっこいいならやらせてくれと心底思った。
Nちゃんは顔も中々、若いしスタイルも良い。この子をゲットして彼女化して引退する事が出来れば見事なハッピーエンドと考えていた。
しかし、付き合うにしても、まずはセックスをしておかないと男女の関係には入れないという認識だった。
時間をかけて口説くなんて難しい事は自分には出来ないと考えていたから、口説く時にも、一目惚れだった、俺と付き合ってよ、彼氏と別れちゃえよ、とか言って一気に落とそうとしていた。
とりあえず口説く。ダメだったら次を探す。
私はそんなゲットの仕方しかしてこなかった。
カラオケ屋でしつこく身体を求めていた時に、Nちゃんから悲しそうにこんな事を言われていた。
「私のこと好きって言ってるけど、そうでもないなって思ってる」
それを聞いた時に、あっこの人ゲット出来ないタイプだと思い、急に興味がなくなった。
その後はカラオケ屋を出て、すぐに別れた。
今度渋谷に一緒に行こうという話になっていたが、それもすぐにLINEでキャンセルを伝えて、完全に関係を切った。
もう今週末はどの街にナンパに行こうかと、次回に向けて頭を切り替えていた。
当時はそれが正しいと思っていたけど、後になって振り返ると、ドライ過ぎと感じる。
目標だった10人ゲットのレベルをクリアしたものの、虚しさを強く感じたのは、Nちゃんの事がちょっと引っかかっていたのも理由だろう。
10人ゲットのレベルクリア後に、5回の出撃で1000人声かけを行ったのも、Nちゃんの事を振り切りたいという意図もあった。
その4回目の出撃では、この新宿で、霧雨の降る中を207分で250人に声をかけた。
あの時に感じた疾走感。
全てを振り切ったつもりだった。
完全引退宣言もしてすっきりと終了した訳だが、上記の通り引退後にFさんのブログを読み、こんな言葉を見つけて衝撃を受ける。
「運命の女神は背後からくる。
ナンパに慣れてくると、自分のパターンから外れてる相手を、自動的にNGにする。
ところが、運命の人、最高のお姫様は、そのパターンにない、外れたところから突然現われる可能性がある。」
Nちゃんのケースはもろに当てはまる。
今までとは違うやり方で、時間をかけて口説く事が出来たのならば、Nちゃんは、ナンパで出来た唯一の彼女だったハンガリー人Aちゃんのように新しい世界を見せてくれたのかも知れない。
Fさんのブログは現役時代に何度も読み返していたのに、肝心な時に大事な所を忘れていた。
もっとも、その事に気づいたのは今から数ヶ月前。今ではそんなに深刻には考えてはいないが。
しかし自分のHPを客観的に読んでみて、もうちょっとマシな終わり方に出来なかったのかよと、どうしても思ってしまった。
新宿の繁華街を1周歩きまわり、西新宿1丁目まで戻ってきた。
繁華街の灯りが遠ざかっていく。
車を停めていた場所に戻った時には、歩き出してから2時間が経っていた。
やっぱり新宿はどでかい。
そしてナンパは「良い」。
色んな気持ちを、色んな自分を経験できる。
全国制覇達成までは、まだたっぷり32府県も残っている。
今後は、基本的には効率の良い出会い系サイトでゲットしやすい人をゲットし、ひたすら数字を上げていく方向で行動しようと思っている。
しかし、もうナンパ師を気取れる立場ではないけれど、1県くらいはロマンを求めてストリートナンパにこだわっても良いかなと、またそんな青臭い事を考えている。
以上、でっかい新宿を歩きながらブツブツ言っていた、ちっぽけな男の戯言でした。
活動再開まで後1年。
長いような短いような。
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