初めてナンパの世界に飛び込み、自分でも信じられないような体験をした話です。
仙台で人生初のナンパ
全国で女性を口説きまくりたい!そういきりたってナンパの世界に飛び込もうとした私だが、その一歩目を踏み出すのは大変だった。まず地元の横浜、川崎でナンパを始めようと思ったけど、どうしても人目が気になってできなかった。東京も距離的にほぼ地元みたいなもの。東京でも無理だった。
ナンパは非日常の行為。その第一歩を踏み出すのにはすごくパワーがいる。それこそ「常識を打ち破る」パワーが必要になると感じた。日常の範囲内の場所でそれを行うのは無理と判断して、地元で初ナンパをするのはあきらめた。
私は考えた末に、旅に出て日常生活を脱した中で初ナンパを行おうと思った。
火川勇気は一人旅を趣味としていて、自転車やバイクで日本中を巡ったことがあった。旅には独特の解放感や高揚感がある。その気分を利用して初ナンパのプレッシャーをごまかせないか、と思った。
ちょうどその時期は2009年9月。たまたま休みが重なってシルバーウィークと呼ばれる連休があった。ちょうど良いタイミングだったのでその連休を使い、友達が住んでる青森県まで旅をすることにした。
シルバーウィーク初日。私は1ヶ月前に買ったばかりの車(30万円の中古セダン)に乗り込み、国道4号線を北上して東北を目指した。初めての四輪車での旅でもあった。
シルバーウィークはゴールデンウィーク並みに高速が混雑すると聞いたけど、私の旅は下道がほとんどなので全然影響はなかった。高速千円だからといって、みんなお金を払って渋滞にはまらなくても…。下道だけで1日に何百キロも移動する、私のような旅人が普通じゃないのかもしれないけど。
国道4号を北に向かい、栃木県でコンビニに立ち寄った。すると、バイクで旅をしてる男を発見する。私は最近やや引きこもりグセが戻りそうになっていて、知らない人に話しかけることに抵抗を感じていた。もちろんこんなザマではナンパどころではない。
がむしゃらに色々な人に話しかけていた20代前半の頃の勢いを取り戻す為に、まずはバイク乗りの男に話しかけてみることにした。
火川 「SR(バイクの車種)乗りの方、どちらから来たんですか?」
バイク乗り 「福島からですよ。東京を見て今から帰るところですよ。バイク旅行ですか?」
火川 「いえ今回はクルマですけど、バイクでも色々行きましたよ」
久しぶりに見知らぬ旅人と会話をすることができた。そのあとも、バイクの話とか旅の話をした。
最後に「お気をつけて!」とお互いに手を振り合って別れる。
なんとも言えない懐かしさを感じた。見知らぬ人とのさわやかな交流。こういうのが好きで旅をしていたのに、最近はすっかり忘れて自分の世界に閉じこもっていた。
一見いかつそうだったけど、実はさわやかだったバイク乗りのあんちゃんのお陰ですっかり旅人魂が復活した。この勢いでついに人生初ナンパに挑む。
夜に初日の目的地である仙台に到着。街はずれの安いコインパーキングに車を入れ、繁華街に歩き出す。
もちろん心臓はバクバクしてるし、緊張のあまり胃の辺りに痛みと気持ち悪さを感じる。
私が考えた声かけは、仙台に多いときくストリートミュージシャンについて尋ねてみるというものだった。
ストリートミュージシャンたちが歌っている場所や、彼らのレベルについて尋ねたりしつつ、タイミングをみてお茶とかに誘う、というものだった。音楽の話にもっていって会話を盛り上げたかった。
何かを尋ねてからナンパに繋げる、というのは不自然で難しそうだった。だが私の性格だと、自然な声かけを考えているうちに行動しないまま何ヵ月も過ぎてしまうだろう。
すでに旅に出てしまったのだから、不自然だろうと恥をかこうと、もうなんでも良い。チャレンジあるのみと思った。
車を降りて5分、いきなり1人歩きの女性を発見してしまった。20歳ちょっとくらいの歳で、顔もスタイルも良い。ちょっと怖そうなメイクだけど、ハイレベルなルックスの女の子だった。よりによって・・・。
心臓の鼓動が高鳴る。胃の辺りが気持ち悪くなってくる。だが、もうどうでも良いと開き直った。
無視されたらそれで良い。話が続かなくてもそれで良い。恥をかいてもそれで良い。緊張のあまりゲロ吐いてもそれで良い。
前方から歩いてくる女性を見つめ続けた。相手の目を見る。絶対に視線はそらさない。意地でも目をそらさず、そのまま斜め前から声をかけた。もう頭空っぽにして最初の一言目にだけ集中した。
火川 「すみません!」
女性 「えっはい?」
きつそうなメイクからは予想できない、なんとも可愛い反応だった。
立ち止まってくれた女性に質問を投げ掛ける。
火川 「ちょっとききたいんですけど、仙台の街でストリートミュージシャンの人たちって見たことありますか?」
女性 「ああ、はい。アーケードの方で良くやってますよ」
アーケードまでの道順を丁寧に教えてくれた。常に可愛いらしい笑顔で明るく答えてくれる。私が神奈川県から来たことも告げると驚いてくれた。
道を教わるときに、わからないフリをして出来るだけ会話を長引かせたりもした。
でもこれで終わったらただの道ききになってしまう。ナンパをしなければ!
次の話題を出した。
火川 「音楽とか好きなんですか?」
女性 「え〜っとJポップとかなら聞きますけど」
質問には笑顔で答えてくれた。でもちょっとソワソワした感じだった。
他にも、仙台のストリートミュージシャンたちの歌の上手さなどの質問もしたけど、ちょっと歯切れの悪い返事が帰ってきた。
最初に話しかけてからまだ2、3分程度だったが、これ以上は間が持たないと思い、思い切って誘った。
火川 「いろいろ教えてくれてありがとう。もし良かったらお礼にお茶でもおごらせてもらえませんか?」
女性 「このあと友達と待ち合わせしてるから・・・」
断られてしまい、深追いはせずここでお礼を言ってわかれた。でも人生初ナンパは意外なほど好反応だった。
あれほど緊張していたのに、女性と会話してる間は緊張することも忘れていた。ただ女性の言葉や表情、しぐさに全神経を集中していた。新しい世界は飛び込んでみると意外と緊張しないものだった。
最初の1人と上手く話せたから、このまま次々に声をかけられる、と思ったらなぜか身体が動かなかった。
心の中で理性がささやいている、「せっかく気分良く話しが出来たんだから今日はもう終わりにしよう。おれは良くやった。今日はこのまま気分良く終わろう」と。
あっさり理性の声に負けて車に戻り、手近な道の駅で車中泊をした。
たった数分話しただけだったけど、人生初ナンパの充実感は半端じゃなかった。
そして翌日、舞台を青森に移して衝撃的な体験をすることになる。
青森で人生2度目のナンパ
仙台での人生初ナンパの翌日、私は友達の住む青森へと向かった。
国道4号を北へと向かい、途中から4号線を外れて西に進路を取り、十和田湖や弘前を通って青森市に着いた。十和田湖で景色にみとれて時間がかかってしまい、到着したのは夜10時頃だった。
青森の街は仙台よりも格段に静かだった。ほとんどの店が閉まっていて、人通りもまばらだった。
また心の中で理性がささやき出す。「こんな人通りが少ないところで声をかけると女性を怖がらせるぞ」とか、「せっかく仙台で良い思い出が出来たんだから、今回の旅のナンパはもうやめておこう」とか。
青森の街に来て、1時間が過ぎようとしているのに誰にも声がかけられなかった。車でグルグルと街をまわり、ちょっと外に出ては、スゴスゴと車の中に退却する。その繰り返しだった。
しかも青森は9月だというのに夜は気温1桁!。寒さのあまり、かっこ悪いダウンジャケットを着ないと外を歩けなかった。当然、理性がまたささやく、「こんなかっこ悪い服装でナンパなんて止めておけよ」と。
最低でも10人以上は声をかけようと誓っていたのだが、あっさりと妥協してしまった。とにかく1人。昨日仙台でも1人だったんだから、この青森でも1人に声をかければOKということにした。
街はずれのパチンコ屋の前に車を止めていたときに、後方から1人の茶髪の女性が歩いて来た。
30代中盤くらいのお姉さんで、なんとこの気温で半袖シャツ姿。青森の人って寒さに強すぎる・・・。手にはスーパーの買い物袋。パックの牛乳が見える。やたら生活感にあふれているが、ルックスはなかなかの美人だった。
青森では最初で最後のナンパのつもりで、捨て身の覚悟でその女性に声をかけることにした。
女性が通り過ぎたあと、車を降りて歩いて追いつき、声をかけた。声かけのパターンは仙台と全く同じで、ストリートミュージシャンについて尋ねてみた。すると、その女性は嬉しそうな笑顔で青森の方言で答えてくれた。
女性の言葉は標準語に直すと以下のような感じだった。
女性 「ストリートミュージシャンなら駅の近くの公園でやってましたよ」
火川 「そうなんですか。音楽とか聞いたりするのは好きなんですか?」
女性 「洋楽がすごく好きですよ」
火川 「どういうアーティストが好きですか?」
会話のキャッチボールがすごく良くつながった。
そして偶然にも女性が知っているアーティストの歌を、私が最近カラオケで練習していたということもあって、そのアーティストの話題で盛り上がった。
女性 「洋楽でエリック・マーティンってアーティストを知ってますか?」
火川 「知ってますよ!最近MISIAのEverythingを英語でカバーしてましたよね。」
偶然が重なって話しがやたら盛り上がった。
その女性はすでにこれがナンパだと気づいていて、「いつもこんな風にナンパしてるの?」と笑われてしまった。こっちの受け答えが真面目すぎておかしかったようだ。
私は「たまにですよ」と答えた。とっさだったので素直に2回目だとは言えなかった。
その女性は名前をRさんと言い、歳はつい先月40歳になったばかりだそうだ。
私は今まで、40代は恋愛的にも性的にもとてもじゃないが対象外と思ってきたけど、Rさんを見て考えが変わってしまった。本当に色っぽい。
Rさんをお茶に誘ってみたけど、仕事帰りで疲れててちょっと無理とのことだった。
ガックリ来ながら、最後にダメで元々のつもりで連絡先を訪ねてみると、なんとあっさり教えてくれた。初の連絡先ゲット!携帯電話のメーカーがソフトバンク同士だったので番号だけでスムーズに交換できたのも幸いした。
Rさんが言うには、車を降りて声をかけてきたから信頼してくれたらしい。逆に、車の中から声をかけてくる男は危ないのが多いらしい。
Rさんにお礼を言って別れた。会話した時間は5分程度だったけど、美人と話せて本当に楽しかった。
車に戻りガッツポーズをとる私。
嬉しさのあまり別れて数分後に、「やっぱり今からもう一度会いませんか?」とメールを送ってしまったのだが、Rさんから「常識的に考えてちょっと無理です」という返事が来る。まあ当たり前だった。
しかし、「明日の午後は空いてるのでまた会いましょう」と言ってもらえた。
はたして再会は出来るのだろうか、そんな不安な気持ちを胸に抱きながら、マクドナルドの駐車場に車を停めて眠った。
翌日、午前中には青森のさいはてにある竜飛崎に行ってきた。実は今回の旅の目的の一つがここだった。
この前年に北海道旅行に行ったのだが、情熱を失った状態だっただけに、行くだけ行ったけど全く旅を楽しめないで終わった。情熱を失うと何事も楽しめない、そんな教訓を得た場所が北海道だった。
竜飛崎から対岸の北海道を見て、前年の教訓を心に刻み付けておこうと思った。竜飛崎からの景色は美しかった。ナンパで女性のメールアドレスゲットという快挙の翌日だっただけに、やたらと目に映るものが綺麗に見えた。
Rさんからもまたメールをもらえて、午後に会えるのは確実な様子だった。
竜飛崎のちょっと手前にあるコンビニに立ち寄ったら、店員がすごい美形の女の子で驚いた。店内は私とその店員の女の子の2人きりだった。
その店員の美形女性をナンパしようか悩んだ。だが、店員に対してどう声をかければいいか全くわからなかった。結局なにも出来ず、数分間の葛藤の末に店を出て、大きなため息をついた。
青森市街に戻り、ネットカフェ自遊空間でシャワーを浴びた。今回の旅に出て初めてのシャワーだった。体と心にまとわりつく汚れ、疲れを洗い流して生き返る思いだった。
青森に住んでいる友達に連絡して今回のナンパのことを伝えた。そしたら「俺も混ぜてくれ」と言ってきた。なんだか変な展開になってきてしまった。
その青森に住んでいる友達は、以前は横浜に住んでいた。私とは長い付き合いだった。昔から女子には結構モテて、青森に引っ越してからも、出会い系サイトなんかで結構遊んでいたらしい。私から見て女遊びの師匠的な部分もある奴なのだが、最近は飲み屋のお姉ちゃんくらいしか口説けないそうだ。
友達からは、「お前よく酒も飲まないでナンパなんて出来るなー」と感心されてしまった。
友達は最近は女に縁がないそうで、Rさんにも友達を呼んでもらって、2対2で会うようにして欲しいとのことだった。
Rさんにメールをしてそのことを伝えてみた。すると、意外な返事が返ってきた。「私の友達はみんな忙しいから、私が火川くんたちのところに1人で行って良いかな?」と。
まさか、ほとんど何も知らない男2人のところに女性が1人で来るとは。
友達がRさんの返事を見て、「これって3Pしてくれって意味かも」とつぶやく。
私も同じ心境だった。テレクラや出会い系サイトで欲求不満気味の女性に会ったことがあるが、それにかなり近い雰囲気を感じた。
待ち合わせ場所は五所川原市のエルム。青森ではかなり有名なショッピングセンターだった。その駐車場に車を停めて、友達と2人でRさんを待つ。
昨日の勢いはどこに行ったのか、私は緊張しまくった。「Rさんがすっぽかしてくれれば緊張しなくて済む」、私はそんなことを口走って友達に笑われる。
Rさんから到着したというメールが来た。指定された場所に行くと、そこには・・・すごく派手な感じの女性がいた。
濃いメイクに短いスカート、極めつけは編みタイツ。あふれんばかりの色気、メスの魅力全開のRさんの姿だった。
Rさんを私の車に乗せて3人でドライブをする。会話は女慣れしてる友達に全て任せて、私はハンドルを握っているだけだった。たまに口を挟む程度。
そしてラブホテルの前に差し掛かったときに友達が言った。
友達 「ここ部屋綺麗なんだよ。入っちゃって良い?」
Rさん 「えっ?変なことしなければ」
友達 「うん。テレビでも見ながらゴロゴロ過ごそうよ」
Rさんはあっさり了解し、3人でチェックインした。モーテルタイプのラブホテルだったので、3人でもなんの問題もなかった。
部屋に入ると友達がわざとらしく「今日寒いな、俺1時間くらい風呂入ってくる」と言い残してバスルームに消えていった。
恥ずかしがっているRさんに気を使ってくれたようだ。
2人きりになったあと、Rさんを止めるものはもう何もなかった。
それこそ、食われるんじゃないか、と感じるくらいの勢いで求められてしまった。
ホテルを出たあと、再び待ち合わせの場所まで送り別れた。Rさんは満足そうな笑顔で去って行った。
その日の夜は友達の家に泊まらせてもらい、昼の出来事を思い出していた。まさか青森県でたった1人に声をかけて、いきなりあれほど色っぽい女性とあんなことになるなんて。しかも自分ではほとんどなにもしていなかった。
例えば全自動洗濯機がボタン一つで、洗い→すすぎ→脱水としてくれるように、全自動セックスボタンでも押したような気分だった。
女性に声をかけたら、やたらと話題が合って盛り上がり、あっさり連絡先がきけて、友達に話せば進んで口説きに協力してくれて、ベッドの上では女性の方から激しく求められた。
全自動セックスボタンを押すという行為。もしそれがあるとしたら、それは、なけなしの勇気を振り絞ってRさんに声をかけた、という行動そのものなのだろう。
勇気を振り絞って、前に一歩を踏み出したら、突風のような追い風が吹いて目的地までふっ飛ばされた、そんな感じがした。
ナンパという行為が男にどれほど興奮と感動を与えてくれるのか、それをいきなり身をもって知ってしまった。
このあと関東に戻ってナンパの世界にはまっていくことになる。
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